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International Conference
"Contemporary Philosophy in the Age of Globalization"

2013年2月8日(金)‐10日(日)
Center for Korean Studies (Conference Room)
University of Hawai`i at Mānoa
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レポート

8日午後2時、石田正人(ハワイ大学)による開会の挨拶をもって、3日間にわたる会合の幕が切って落とされた。まずは、今回の会合を呼びかけた主催者である中島隆博(東京大学)から、「グローバル化時代における現代思想」の諸問題を俯瞰することを狙った今回の会合が企画されるに至った経緯と趣旨について説明された。

その後、出席者各位による簡単な自己紹介を挟んだ後、中島隆博、Peter D. Hershock(ハワイ大学)、古荘真敬(東京大学)による口頭発表が行われた。
中島は、Modern Philosophy in Conflict: Science and Religion in China and Japan と 題し、第一次世界大戦に見てとられた西洋科学技術文明の無残な帰結を乗り越えこうとした胡適の哲学的格闘の意義を、「宗教と科学」の対立を乗り越えようとした西田幾多郎による哲学的努力と重ね合わせつつ論じた。
Hershock は、Liberty and Irony: Some Buddhist Cautions regarding the Globalization of Choice と題して、現代のグローバリゼーションが空前の規模にお いてもたらした多様な発展の陰で生じている深刻な不平等の問題への注意を促し、より公正な将来を築くためには、単なる「個人の選択の自由」を超えた仏教的な自由の思想に学ぶべき道があることを指し示した。
古荘は、On the Notion of ‘Permanence of Human Life’ in Jonas’ Ethics と題して、 ハンス・ヨナスの未来倫理の思想にあらわれる「人類の永続」なる観念をとりあげ、この観念が、事実的には不可避であろう将来における「人類の絶滅」という事象との関わりにおいて何を意味しうるかについて、カントやハイデガーを参照ながら考察することを試みた。(報告:古荘)

9日の午前中のセッションでは、Tamara Albertini(ハワイ大学)、梶谷真司 (UTCP)、Robert Cummings Neville(ボストン大学)の発表が行われた。
まず Albertini(ハワイ)は、Islamic Philosophy without Borders: The Not So Silly Question of Geography というタイトルで、イスラム哲学について、その地理的な広がりと、歴史的展開について講じた。日本の哲学を日本における哲学、ロシアの哲学をロシアにおける哲学、というふうに地理的に限定し、特定の文化、民族、言語、宗教と結びつける考え方があるが、彼女によれば、イスラム哲学は一般に言われるのとは異なり、そのように限定して捉えるべきではないという。むしろイスラム哲学は、地理的、言語的、宗教的制約を超える普遍性と多様性をもつものであり、そのような視点から見れば、ギリシャ哲学や中世哲学との関連も違った仕方で見えてくる。
次に梶谷は、Philosophy as Dialogue and Education: Practice of Philosophizing in a Diversified Society というタイトルで、昨今日本を含めて世界中で起きている哲学対話の潮流を、たんなる既存の哲学の実践的な形としてではなく、グローバル化により多様化した社会における新しい哲学の形態として捉えることを提案した。すなわち、哲学カフェや哲学ワークショップ、あるいは子供のための哲学など、今日様々なところで対話のメソッドを取り入れ、広い意味での教育的な側面をもった活動が見られるが、これは新たな問題や思想を現実社会の生活 そのものの中から生み出していく哲学運動なのだと論じた。
最後に Neville は、Contemporary Global Philosophy というテーマで、現代において世界の様々な思想伝統を比較するさいにどのように捉えるべきかを論じた。彼によれば、1)この世界の構造、人間どうしの関係や自然との関わり、人生の意味や価値といった形而上学的視点、2)自然、社会、宗教、芸術、科学、文化、倫理などのテーマ別に見る視点、3)科学技術の発展や環境問題、社会問題など、様々な出来事に起因する規範的な問題から考察する視点がある。とりわけ、グローバル時代の今日では、こうした現実社会の問題に取り組むことが急務であり、それによりこれまでの哲学が大きく変容していくのだと述べていた。(報告:梶谷)

9日午後の最初のセッションでは、石田正人(ハワイ大学)、Ahti-Veikko Piertarinen(ヘルシンキ大学)、石原孝二(東京大学・UTCP)が発表した。石田の発表 The Past Living in Words; Nishida’s Philosophy of Historiography in 1925 は西田の小論「表現作用」にもとづきながら過去と言語の関係に関する西田の考え

方を再構成するとともに、「過去」の哲学をいかに論じていくべきかに関して議論を展開した。Pietarinen の発表 Guessing at the Unknown Unknowns は政策決定や 経済、テクノロジーアセスメントにおける推論の「アブダクションモデル」(abductive model)を導入することを提案し、将来の事象に関するシナリオ作成の 特徴について論じるものであった。石原の発表 The Uncanny Valley and Developmental Robotics: Toward a Philosophy of Japanese Humanoid Robotics は 1960 年代以降のヒューマノイドロボット研究や発達ロボティクスの展開を紹介しな がら、人間理解とロボット研究の関係にまつわる哲学的な問題を抽出し、議論を展開した。(報告:石原)